一般的に用いられる防腐剤である塩化ベンザルコニウムについて考える。
角膜への障害も報告があるが、それは別の記事でまとめる予定。
今回は、配合変化の観点から点眼間隔を5分以上あける意義についてざっくりとまとめる。
①塩化ベンザルコニウムと配合変化
・陽イオンの界面活性剤の一種(分子量は比較的大きめ)
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そのため、陰イオンと結合して不溶性の塩「えん」を作るため配合変化の可能性がある。
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陰イオンのものは、点眼剤の防腐剤である
「パラベン類」、「クロロブタノール」などが該当する・・・
つまり、防腐剤の違う点眼を使用すると塩「えん」を形成するため好ましくないのである。沈殿する可能性がある。
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このため、
「異なる2種類の点眼薬を差す場合に5分以上間隔をあけてください」
と指導する。「吸収のため」だけを考えての5分ではない。
その他の理由を下記に示す。
②5分以上間隔をあける意義
間隔をあけるのはよく「5分」と言われるが、理由は様々
1つは、上記の塩「えん」の形成を避けるためである
塩化ベンザルコニウムの滞留性
点眼した塩化ベンザルコニウムの濃度は点眼 5 分後に1/10以下の濃度まで速やかに低下する。
※点眼後5分以上経ってからソフトコンタクトレンズを装着する理由もこれである。角膜障害を起こすことがあるので塩化ベンザルコニウムの濃度が下がってから装着するのが基本となる(詳細は別記事予定)
主成分の吸収面
点眼後毎分15%の薬剤が消失すると報告があるため、5分かけると、75%以上吸収される。(薬剤ごとに違うため一概には言えない)
※2分ほどでほとんど吸収されるものもあるのでメーカーに問い合わせるのもおススメ
※先に点眼した薬剤が流れてしまうため、
一般的に、最も効果を期待するものを最後に点眼した方がいいと言われている。
しかし、個人的には、忘れがちな高齢者は、最初に大切なものを点眼するように指導している。臨機応変な対応は必要と思われる。
③服薬指導上の注意点
服薬指導のときに、
安易に「2つの点眼の間隔は5分以上あけてくださいね」なんて言わないでほしい。
自分が点眼すると想像すると、点眼のために淡々と5分待つのは辛い・・・
例えば、作業の合間を具体的に示してあげるのもよいと思う。
「5分あけるのは大変なので食事や歯磨きの前と後など、
作業の前後に点眼すると負担が減ります」
「テレビのCMの時に1種類ずつ差してどうですか?」
など工夫してはどうだろう
参考資料
点眼剤―製剤設計と服薬指導:参天製薬株式会社資料
参天製薬株式会社問い合わせ
小玉ら.コンタクトレンズ装用上における点眼使用の安全性について;
あたらしい眼科 17:2.267,2000