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泌尿器関連 薬物動態・相互作用

唾液分泌とα遮断薬の口渇について考える~なぜ口渇の副作用があるの?~

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質問を受けたので簡単にまとめる。
前立腺肥大症の薬剤であるα遮断薬は、口渇の副作用が少なからずある。
薬剤によって頻度に差はあるが、もともとα受容体のサブタイプへの作用の差があるために生じると思われる。

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①唾液の成分や分泌

成分

唾液は、水や電解質の低分子や分子の大きなタンパク質(ムチン、アミラーゼ)で構成される。この成分が、粘膜保護や消化作用に関与している。

分泌

唾液の分泌は、自律神経の2重支配を受けている。
すなわち、副交感神経と交感神経の影響がある。
ざっくり言うと、副交感神経と交感神経のどちらが優位でも
唾液の分泌自体は多くなる。
ただ、活性化される分泌成分が違う。

副交感神経が優位に働くと水やイオンが多く分泌される。
交感神経が優位に働くとタンパク質成分が多く分泌される。

そのため、リラックスしているとサラサラとした唾液が多くなり、
緊張するとネバネバした唾液が多くなる。

補足:唾液腺細胞と受容体

α受容体→α1A、α1B、α2D
β受容体→β1
ムスカリン受容体→M3
上記の受容体サブタイプが関わっていることが分かっている。
まだ詳しく分かっていない機序などもあるが参考までに載せた。

※それぞれの受容体は何に関わっている?

・α受容体→水分泌や開口分泌(作用は弱い)の両方に関与

・β受容体→糖タンパク質のムチン分泌や糖質分解酵素のアミラーゼ分泌に関与
(β受容体の方が他の受容体より関与が大きい)

・ムスカリン受容体→水分泌と開口分泌にかなり関与

②α遮断薬と口渇

今回は、前立腺肥大症の薬剤にスポットを当てる。
①で載せた交感神経の作用を遮断するため、少なからず口渇に関与する可能性がある。頻度などを比較するために添付文書とインタビューフォームを引用する。

各薬剤を比較すると、シロドシンが一番頻度が高いので注意が必要と思われる。

シロドシン(ユリーフ®)

・排尿障害患者対象臨床試験の総症例 873 例中、副作用は 391 例(44.8%)で認められた。口渇 50 例(5.7%)

・製造販売後に実施された使用成績調査及び特定使用成績調査(長期)の安全性解析対象症例 7,851 例中、副作用は 887 例(11.3%)で認められた。口渇 64 例(0.8%)

タムスロシン(ハルナール®)

承認時は口渇の報告なし。市販後調査では0.01%
添付文書上は頻度不明になっている。

ナフトピジル(フリバス®)

口渇0.1%未満(発生機序は不明)

参考資料
唾液分泌のメカニズム:杉谷博士
Tojyo Y, et al. Cell Calcium. 1997;22:455-462.
Gray PTA. J Physiol. 1988;406:35-53.
Harmer AR, et al. Am J Physiol. 2004;288:G118-G124
唾液腺細胞の薬物受容機構:川 口 充,山 岸 久 子
日薬理誌1995;105:295-303.
ユリーフ®、添付文書、インタビューフォーム
フリバス®、添付文書、インタビューフォーム
ハルナール®、添付文書、インタビューフォーム