腎臓病と合併症 について簡単にまとめる。治療目標についてもざっくりと・・・
①腎臓病と合併症
腎臓病の合併症により、さらに腎臓機能は低下する。
夜間の尿量増加、血液中のカリウム上昇、リン上昇、カルシウム低下、
代謝性アシドーシス、尿毒症など色々引き起こすことになる。
そのため、透析導入にならないように各病態への対応が必要である。
高血圧
腎臓の働きとして、水分と塩分の濾過を行っていることがポイントである。
腎機能が低下する
↓
塩分・水分が溜まってしまう
↓
血圧上昇する
↓
腎臓濾過機能への負担が増える
↓
蛋白尿が増加する
↓
さらに、心臓への負担が増え、心機能が低下する。
血圧上昇が末期腎不全を引き起こすリスクとなる
貧血
腎臓で造血ホルモンである「エリスロポエチン」は分泌される。
エリスロポエチンは赤血球を作るように骨髄に刺激を送り、赤血球の量を増加させる。そのため、腎機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が低下するため貧血が起こる。
貧血がひどいほど末期腎不全になる割合が高いことが分かっている。
高血糖
高血糖状態が続くと腎機能が低下することが分かっている。
高血糖状態は血管にダメージを与えるので当然ともいえる。
②合併症の治療目標
CKDは、腎機能(GFR:G),蛋白尿(アルプミン尿:A)で分類される。
GFRによって、G1、G2、G3a、G3b、G4、G5の6つのステージに分けている。
慢性腎臓病の原因疾患、尿蛋白もしくは尿アルブミン量の値によって、
A1、A2、A3の3つのステージに分類される。
GFRの値は、以下のように区分される。
G1→正常または高値 ≧90
G2→正常または軽度低下 60~89
G3a→軽度~中等度低下 45~59
G3b→中等度~高度低下 30~44
G4→高度低下15~29
G5→末期腎不全(ESKD)<15
※A分類の詳細は今回割愛
ガイドライン等で確認していただけるとありがたい。
エビデンスレベルの分類
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018における分類
【アウトカム全般のエビデンスの強さ(エビデンスグレード)】
A(強):効果の推定値に強く確信がある
B(中):効果の推定値に中程度の確信がある
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
D(非常に弱い):効果の推定値がほとんど確信できない
【推奨の強さ(推奨レベル)】
1:強く推奨する
2:弱く推奨する・提案する
なし:明確な推奨ができない
高血圧
基本的な目標値は
糖尿病合併→130/80 mmHg未満
糖尿病非合併→140/90 mmHg未満
ガイドラインでは年齢的に75歳以上と未満も分けていたり詳しく書かれている
興味があればガイドラインを参照のこと
※エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018の記載
「第4章CQ2
「高血圧を伴うCKD患者に130/80mmHg未満への降圧療法は推奨されるか?」
〈CKDステージG1,2〉
DM合併:130/80 mmHg未満を推奨する
→ B 1 .
DM非合併:蛋白尿A1区分は140/90 mmHg未満を推奨する
→ A 1
A2,3区分は130/80 mmHg未満を推奨する
→C 1 .
〈CKDステージG3~5〉
DM合併:130/80 mmHg未満を提案する
→ C 2 .
DM非合併:蛋白尿A1区分は140/90 mmHg未満を提案する
→ C 2 ,
A2,3区分は130/80 mmHg未満を提案する
→C 2 .
ただし,DM合併の有無およびCKDステージにかかわらず,
収縮期血圧110 mmHg未満へ降圧しないよう提案する
→C 2 .」
貧血
保存期CKD患者の腎性貧血管理目標値はHbの値を見る。
ヘモグロビンHb濃度「11g/dL以上13g/dL未満」
※エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018の記載
第6章CQ1
「腎性貧血を伴うCKD患者での赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療における適切なHb目標値はどれくらいか?」
「保存期CKD患者のESA治療における目標Hb値は11 g/dL以上,13 g/dL未満を提案する.ESAを投与する際には,ESA抵抗性の原因となる病態の検索および是正に努め,ESA投与量が過剰にならないよう留意すべきである.ただし,重篤なCVDの既往や合併のある患者,あるいは医学的に必要のある患者では,Hb 値12 g/dL を超える場合にESAの減量・休薬を考慮する
→B 2 」
糖尿病
HbA1c7.0未満を目標とする。
エビデンスレベルも割と高いので確認すること
低血糖には注意する必要がある。
※エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018の記載
第16章CQ3
「DMを伴うCKD患者にHbA1c 7.0%未満の血糖管理は推奨されるか?」
「糖尿病性腎症患者におけるHbA1c 7.0%未満の血糖管理は,早期腎症から顕性腎症への進行を抑制するために推奨されるが,顕性腎症期以降の進行抑制に関するエビデンスは不十分である.HbA1c 7.0%未満の血糖管理では低血糖に注意する
→B 1 」
参考資料
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018
Klag MJ.et al .: N Engl J Med 334;13-18,1996