フォシーガと心不全 についてまとめる。一般名はダパグリフロジンである。
2020 年 11 月に「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」の効能又は効果が追加承認された。
実は、SGLT2阻害剤が日本で発売されて早い段階で・・・
学会等で心臓にもいいのでは?という話が出ていたので
遂に追加承認されたのかという感じだ。
来年には、CKDに対する効能が追加されるのだろうか・・・
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フォシーガと心不全
ガイドラインのきっかけとなったデータは、国際共同第Ⅲ相試験(DAPA-HF試験)である。
参考として、「心血管死、心不全による入院、緊急受診」の発現リスクをプラセボ群と比較し、26%有意に低下させた。
効能・効果
・1型糖尿病
・2型糖尿病
・慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
※1型糖尿病にも使えるSGLT2阻害剤は、他にイプラグリフロジン(スーグラ®)だけである。
※効能又は効果に関連する注意点
「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」
要は左室駆出率(LVEF)が低下したHFrEF患者に用いる。
※HFrEFについてはこちらを参照
※レセプトのコメントに医師は、「LVEFの測定値」、「測定日」を記入する必要がある。
薬局でも確認は必要だと思われる。処方せんや患者から直接情報が得られない場合は、数値等を疑義照会すべきである。
糖尿病に対しての処方なのか・・・
慢性心不全に対しての処方なのか・・・
分からないと服薬指導出来ないので重要である。
【保険給付上の注意点】
インタビューフォームに記載があるので確認しておくと良い
「医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について(令和2年11月27日 保医発1127 第3号)抜粋
効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項について
本製剤を「慢性心不全」に用いる場合は、効能又は効果において、「ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。また、効能又は効果に関連する注意において、「左室駆出率が保持された慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」とされているので、投与開始に当たっては、左室駆出率の計測年月日及び左室駆出率の値を診療報酬明細書に記載すること。なお、他の医療機関で左室駆出率を測定した場合には、当該測定結果及び医療機関名を記載することで差し支えない」
※専門医に測定をお願いした場合は、「測定結果」と「医療機関名」の記載でよいとのこと
用法・用量
・1型、2型糖尿尿の場合は、5mgと10mg両方服用することが出来る。
・慢性心不全の場合は、10mgのみである。
※県によっても違うだろうが、初期用量としては、10mgしかない。
もしも副作用などが発生して5mgを使う場合は、コメントに理由を入れるべきである。
なぜ慢性心不全に効果があるのか?
これからもっと詳しく分かってくるとは思うが、
まずは3つの作用を整理すると良い。
・「腎臓を介した作用」→うっ血症状の改善
・「血行力学的作用」→心室への負荷を改善
・「心臓への作用」→心線維化を抑制
【腎臓を介した作用】
浸透圧利尿作用が関係している。
近位尿細管に存在するSGLT2に結合
↓
グルコースとナトリウムの吸収を抑制
↓
尿細管内のグルコースとナトリウムが増加
↓
浸透圧↑
↓
水の再吸収を抑制
↓
尿量増加
↓
血管内用量をほとんど変えずに間質用量を減らす特徴がある
※心不全では、間質性浮腫が認められる
↓
慢性心不全におけるうっ血を改善
【血行力学的作用】
尿細管ナトリウム濃度を上昇
↓
尿細管フィードバック機構を是正
↓
糸球体輸入細動脈を収縮
↓
糸球体高血圧を抑制(糸球体内圧低下)
↓
糸球体濾過機能を正常に維持
↓
糸球体内圧低下と(過剰な)糸球体濾過量の減少
↓
腎保護作用/心保護につながる
↓
心室の負荷状態の改善につながる
※他にも血管内皮機能の改善や動脈壁硬化の改善も分かってきている
【心臓への作用】
心筋組織の線維化は心不全に至る最終経路と言われている。
線維化は、線維芽細胞が産生する細胞外マトリックスが関わっている
心不全では、線維芽細胞が過剰に増えている状態
↓
細胞外マトリックスの過剰産生と分解抑制
↓
心筋組織に沈着
↓
心線維化の一つの原因
↓
ダパグリフロジンは、M2マクロファージを増殖させる
↓
線維芽細胞の浸潤を抑制
↓
細胞外マトリックスを減少
↓
心線維化の抑制につながる
※他にも心線維化の原因として、ナトリウム/水素交換輸送体-1(NHE-1)の過剰な活性化もある。
※NHE-1は心筋細胞に発現しており、ナトリウムの細胞内への取り込みに関わっている。
ナトリウム/水素交換輸送体-1(NHE-1)の過剰な活性化
↓
ナトリウム/カルシウム交換輸送体が働き
↓
カルシウムの過負荷状態
↓
心筋細胞の損傷・アポトーシスを誘発
↓
心線維化に関与
↓
ダパグリフロジンは、NHE-1に結合
↓
細胞内ナトリウム濃度が減少
↓
細胞内カルシウム濃度を低下
↓
心線維化を抑制
※合併症として糖尿病があるのと非糖尿病がないのとでは慢性心不全に対する作用は変わらない。(詳しいデータはインタビューフォームを参照)
※SGLT2ヘの選択性が高いため、薬物相互作用が少ない
心不全に用いる場合の水分摂取
水分制限されている心不全においても、SGLT2阻害剤が追加された場合は、
メーカーとしては、水分摂取を行った方が良いとのこと。ただし医師の判断もあるので
必ず疑義照会して水分摂取をどうするか決めておくと服薬指導しやすいのではないだろうか。
※ちなみに、フォシーガ5mgで80mg/日、フォシーガ10mgで130mg/日の尿糖が出る。
1日500mlくらいの水分は多めにとるのが目安である。
参考資料
小野薬品工業株式会社勉強会
医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について(令和2年11月27日 保医発1127 第3号)
フォシーガ®添付文書、インタビューフォーム