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循環器 検査値

D-ダイマー(D-dimer)とは?~検査(上昇要因、基準値、FDPとの違いなど)をざっくりと~

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D-ダイマーは様々な要因で上昇する検査項目であり、除外診断に使われる。
基本的には「血栓」を示唆するものである。
上昇する疾患やどういう場合に用いることがあるのか整理しておく。

D-ダイマーとCOVID-19の話はこちらを参照
日本血栓止血学会の話を載せてます

①D-ダイマーとは?

血液凝固に関わるフィブリンに注目すると

何かが原因で血管の中に血栓ができる

それでフィブリンが形成される

フィブリンはプラスミンによって溶解される

その結果、FDPが産生される

その中の要素としてD-ダイマーがある

※要するに、D-ダイマーはフィブリンの分解産物である

※FDPとは?
フィブリノゲン・フィブリン分解産物である。
ただし、単一の分子ではなく、種々の分子量をもつ多様な集合体

②D-ダイマーの検査について

線溶系について

・一次線溶→フィブリノーゲンが溶解されること
・二次線溶 →フィブリンがプラスミンによって溶解されること

FDPはどちらでも増加するのに対し
D-ダイマーは、フィブリン形成後なので「血栓」の存在を示唆することができる

つまり、血栓形成傾向を認める疾患で上昇する
循環器領域ではDVTやPEを疑うときに用いられている。
VTE(DVT+PE)病態では、十数時間から数日でピークとなることが多い。
DVTの原因となる血栓は、脚または骨盤の深部静脈で形成される。

DVTやPEと診断されたものは、陽性を占める割合が多い。
しかし、陽性だけでは、確定診断出来ない。え・・・?

DVT: 深部静脈血栓症
PE: 肺血栓塞栓症
VTE:静脈血栓塞栓症

何のために測定するのか?

上昇要因が多く非特異的指標のためである。
→DVTやPEの可能性があまり高くない場合に
陰性をもって疾患を否定するのに用いる 。

※DVTの急性期に上昇する凝固線溶マーカーは多数あるが、
除外診断にD-ダイマーが有用

※抗凝固薬中止後のDダイマーの上昇はDVTの再発の指標となるため
抗凝固療法の継続期間や終了期間の判断の参考となる

注意点(ネガティブな話)

・現在Dダイマーで血栓症の発症を予見できるエビデンスが乏しいため
日常的な測定の有用性は高くない。

・採血法がちゃんとしてないと値がちゃんと出ない

・攪拌が十分でなかったり採血量を守らなかった場合
→凝固系反応が起こりDダイマーが検出されてしまう

基準値?について

基準時の標準化はされていない 。
ただし<500ng/mlあるいは<1μg/mlとする施設が多い。
基準値がゼロになることはない。

※加齢による上昇を考える場合がある。

VTEの診断ではDダイマーのカットオフ値は年齢が上がるにつれ上昇し、
50歳以上では、年齢×10ng/mlとしたほうが診断率を落とさない。

D-ダイマーの上昇要因

DダイマーはDVTに驚異的に上昇するものではない
上昇要因疾患や病態は様々である。

・深部静脈血栓症(DVT)
・肺血栓塞栓症(PE)
・炎症性疾患
・急性大動脈解離
・動脈瘤
・閉塞性動脈硬化症
・手術後
・感染
・播種性血管内凝固症候群(DIC)

他にも
悪性腫瘍、肝硬変、外傷、加齢、妊娠中、心筋梗塞、脳梗塞、四肢虚血、
心房細動など

Dダイマーがスクリーニング試験検査には適さない場合(偽陽性となってしまう)

入院患者、がん患者、妊婦、高齢者などは上昇が多く見られる。
上記のような入院患者には有用性は低いので注意する。

補足:DICの場合

基本的に凝固系の亢進なのでD-ダイマーもFDPも上昇するが、
FDPを用いるエビデンスが高いためFDPを優先する。

D-ダイマーとFDPが乖離する場合

線溶系がフィブリンの形成が出来ないにも関わらず、過剰に活性化される状態 

凝固系が活性化される以上に線溶系が活性化される。
(フィブリンの存在は関係ない)

→FDPが増加し、D-ダイマーの増加が軽度に留まる。

こういった場合は両方測定するとよいらしい

例:前骨髄球性白血病、前立腺がん

参考資料
肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関する
ガイドライン2017改訂版
D-dimerはとはどういう意味を持つ検査ですか
公益財団法人、日本心臓財団