NSAIDsに目がいってしまうが、
アセトアミノフェンも注意が必要である。
どうしても肝障害の方が気になってしまうが、実は腎臓の方にも注意が必要なのでちょっと整理する
アセトアミノフェンと肝障害はこちらを参照
①アセトアミノフェンと腎障害
慢性腎不全
急性腎不全を引き起こすリスクは低いが、
長期高用量使用により慢性的な腎乳頭壊死・石灰化、慢性間質性腎炎による慢性腎不全を引き起こすことがある。
ちなみに添付文書(カロナール®)上は、重要な基本的注意に記載はなく
少しだけ「重要な副作用」にある程度である。
重要な副作用の記載
「間質性腎炎,急性腎不全があらわれることがある ので,観察を十分に行い,異常が認められた場合 には投与を中止し,適切な処置を行うこと」
頻度不明であり、禁忌には、「重篤な腎障害のある患者」と書いてある。
頻度不明な理由は、インタビューフォームにある
「間質性腎炎、急性腎不全:国内において因果関係の否定できない症例の集積がされていることから、注意 喚起を図ることになりました。」
NSAIDsとの併用に注意
アスピリンを含むNSAIDsとの併用することで
両薬剤の腎髄質の乳頭部での濃縮が起こる。
↓
アセトアミノフェンの中間活性代謝物
N-acetyl-p-benzoquinone imine (NAPQI) を介した
直接毒性が発生し腎障害を発症すると考えられている。
詳細(論文引用)
アセトアミノフェンとアスピリンの服用
↓
皮質および乳糖部で高濃度のサリチル酸がグルタチオンを枯渇させる
↓
グルタチオンによる N-acetyl-p-benzoquinone imine (NAPQI)
の不活化が出来ない
↓
N-acetyl-p-benzoquinone imine (NAPQI) が増加
↓
脂質過酸化、腎乳頭タンパクのアリル化を起こし、
乳頭壊死、石灰化の原因となる。
※グルタチオンはアセトアミノフェンの毒性化合物
N-acetyl-p-benzoquinone imine (NAPQI)の不活性化に必要。
※サリチル酸:アスピリンの代謝物
②腎障害と血中濃度
腎代替療法(透析や腎移植)が必要になる末期腎不全
(end-stage kidney disease; ESKD)の方は特に注意である
ざっくりまとめると下記のようになる。
ESKD患者において、アセトアミノフェン濃度は約3倍に上昇する。
アセトアミノフェンの抱合体が蓄積して胆汁へ排泄され、
腸管内で脱抱合を受けて再び吸収されるため、
連続投与によりアセトアミノフェン濃度は上昇する
※腸管循環が起こる
参考文献
カロナール®添付文書、インタビューフォーム
Duggin GG: Combination analgesic-induced kidney disease: the Australian experience. Am J Kidney Dis. 1996 Jul;28(1 Suppl 1):S39-47.