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生薬・漢方薬

地黄について~乾地黄と熟地黄の違い~

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普段医療用の漢方薬を使っていると区別はないが、
乾地黄と熟地黄の違いを知っておくと良いので簡単に整理する

①地黄

特徴

地黄は『神農本草経』の上品に収載されている。
ゴマノハグサ科ジオウの根茎
滋潤、補血、利水、緩下作用、他に止血作用、解熱作用、免疫賦活作用もある。
「身体の渇きがある」「血虚」のものに用いる。
→虚弱で貧血のあるものに使われたりする。
熱を下げる効果は、②で述べる乾地黄に期待される。

注意点

甘みがあり、胃腸障害が起きやすいので注意が必要
詳しい地黄の胃腸障害についてはこちらを参照

地黄を含む漢方薬

八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸
十全大補湯、人参養栄湯、など多数の漢方薬に含まれている。

②乾地黄と熟地黄の違い

作用の違い

地黄には「生地黄」、「乾地黄」、「熟地黄」の3種ある。「生地黄」(生のまま)は、ほとんど出回らないため
「乾地黄」と「熟地黄」の違いを知っておくと良い。

「熟地黄」は「乾地黄」を水あるいは少量の酒で蒸して乾燥したものである。

・清熱作用:「乾地黄」の方が強く、「熟地黄」にはみられない。
・補益作用:「熟地黄」の方が「乾地黄」より強い

古典では、六味丸の場合、病態によって「乾地黄」と「熟地黄」を使い分けるよう指示されていたりする。現在日本では区別されていないことが多い

成分の違い

「乾地黄」から「熟地黄」への修治により地黄の成分に変化する。
報告のあるものを下に少し紹介する

・乾地黄

「乾地黄」には全体として血糖降下作用がある。
報告がある有効成分としてカタルポールやレーマイオノシドが分かっている。
カタルポール(イリドイド配糖体):利尿作用、
レーマイオノシド:膀胱尿道平滑筋の収縮作用、
アンジオテンシンIによる血管収縮抑制作用などがある。

これらの成分は「乾地黄」に多く、「熟地黄」では減少して いる。

・熟地黄

線溶系亢進、血流促進作用がある。

イリドイド配糖体(カタルポールなど)が減少する。
→血糖降下、頻尿に対する作用としては乾地黄より劣っていると思われる。

フェネチルアルコール配糖体のアセトサイド、セレブロサイドが生成され、
マンニノトリオース(三糖類)やフルクトース(単糖類)などが増加することが分かっている。
→糖類が増えるので栄養補給として優れている。

※難消化性のスタキオースは熟地黄では減少している

薬性の違い

【寒熱】【補瀉】【燥潤】【升降】【散収】の薬性の違い
乾地黄:【寒熱】寒性、【補瀉】中性、【燥潤】潤性【升降】升性【散収】収性
熟地黄:【寒熱】温性、【補瀉】補性、【燥潤】潤性【升降】升性【散収】収性

見比べてみると、【寒熱】【補瀉】が違うことが分かると思う

鳥居塚和生: モノグラフ生薬の薬効・薬理, p.197, 医歯薬出版, 東京, 2003
そこが知りたい漢方2012年4号から2012年3月号冊子
https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?ev_ja:E00107