ホスホマイシン は、意外と特徴的な抗菌薬である。他の抗菌薬にはない部分があるので整理する。
ホスホマイシンカルシウム(ホスミシン錠)が経口薬として、
ホスホマイシンナトリウムであるホスミシンSは注射剤として販売されている。
ホスホマイシン (ホスミシン)とは?
効能・作用機序
主に細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用する。
特徴的なところは、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)の生合成の初期段階を阻害する。
※βラクタム系は最終段階を阻害する特徴がある。
嫌気的な条件でも作用するため、ホスホマイシンは、腸管感染症に使われる。
むしろ嫌気的な条件ではMICが低下するため効果が増加するのも特徴的である。
「緑膿菌」を除く多くのグラム陰性菌に効果を示す。
「サルモネラ菌」、「病原性大腸菌」、「赤痢菌」、「カンピロバクター」などにも効果がある。
腸管からの吸収が悪いため、注射剤も発売されている。
※ホスホマイシンの経口剤のバイオアベイラビリティは25.9%程度
(これが腸管で作用するためのメリットにもなっている)
※注射剤には、腸管感染症の適応はない。その代わり呼吸器感染症に適応を持つ
※ガイドラインで第一選択薬や第二選択薬としては記載されていない
※尿路感染症、腸管感染症及び眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科等の感染症に使われる
用法・用量
「通常、成人はホスホマイシンとして1日量2~3g(力価)を3~4回に分け、小児はホスホマイシンとして1日量40~120mg(力価)/kgを3~4回に分け、それぞれ経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する」
※添付文書上は、3回から4回と飲む回数が多いのと錠剤が大きいのがデメリットの部分かもしれない。
その他の特徴
・単純な構造式である。βラクタマーゼに対して安定的である。耐性菌に対して有効な可能性がある
・大腸菌に対しても感受性がよい
・ESBL産生菌やキノロンに対して耐性をもつものに効くことがある
・抗原性がなくアレルギーはほとんどないと言われている
※ペニシリン系やセフェム系などアレルギーがある場合、選択肢になりうる
・他の抗菌薬との交差耐性を示さない
・抗菌力はあまり強くない
・頻度は少ないが、重大な副作用として偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎に注意する
・先ほども述べたが、バイオアベイラビリティはインタビューフォームによると25.9%と高くない。
→吸収が悪いのを利用して経口剤は胃腸炎などに使われる。
また、経口剤の吸収が悪いため、注射剤が発売されている背景がある。
参考資料
ホスミシン®添付文書、インタビューフォーム