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マルファン症候群 について~意外と多い?~

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マルファン症候群 について簡単に整理する。
質問があったのでまとめるが、意外と知られていない症候群かもしれない
MFS:Marfan syndrome

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マルファン症候群とロサルタン ~大動脈解離の予防が大切~

マルファン症候群 について

1896年にフランス人小児科医であるAntoine Marfanにより初めて報告された症候群である。

どんな病気?

体の組織同士が結合するために必要なタンパク質の1つとしてフィブリリンがある。
フィブリリンを作るための遺伝子に異常がある場合に起こる症候群であり、遺伝性結合組織疾患。
その原因遺伝子は、第15染色体に存在する「FBN1」が知られている。
全身(眼、骨、心臓、血管、肺、中枢神経系など)の組織の結合が弱くなるため、伸びたり、変形したり、破れることもある。自分では気づきにくい。

※国の特定難病、小児慢性特定疾病に指定されている
※他にも別の遺伝子(TGFBR1,TGFBR2,SMAD3,TGFB2,TGFB3)の異常でも少し症状は違うが報告がある。
※遺伝子の異常は5000人に1人程度の割合いるらしい→個人的に多く感じる
※常染色体優性遺伝であり、確率的には50%で親から子に遺伝する。
ただし、診断された患者の4人に1人は親に遺伝子の異常がない。隔世遺伝はしない

注目されているファクター

フィブリリンがTGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)の制御に関わっていることが分かっている。
TGF-β系の過剰シグナルにより組織に変化をもたらすことが報告されている。
過剰シグナルが原因なのでTGF-βを標的とした治療が注目されている。
この過剰シグナルを抑えるためにARBのロサルタンが使われるようになった。
別記事でも詳しくまとめる予定である。

症状

軽度から重度までさまざまな状態の人がいる。
色々な特徴がある。

・手や指が細長い
・背骨が曲がる
・胸の変形
・近視・遠視
・家族(家系)より身長が高い
・関節がやわらかい
・心臓や肺に障害がある
・ヘルニアになりやすい
・皮下脂肪が少ない

症状が生じる部位

結合組織が存在する部分には、症状が出る可能性がある。
骨や関節はもちろん、心臓、血管、眼、肺、中枢神経系’(脳・脊髄)などに起こる。
心臓や肺は危険度が高いので注意が必要である。
どんな事が起こるか例を示す

【心臓】
大動脈が弱くなり、拡張したり、破裂することがある。また、心臓の弁に異常が起こることもある。
大動脈解離、動脈瘤、弁膜症など

※妊娠は大動脈解離のリスクが高くなる。通常、帝王切開を行う

【肺】
気胸が起こりやすくなる。

【眼】
眼の場合、水晶体と網膜が離れて網膜剥離が起こることがある。
また、水晶体のずれによる近視や遠視も生じる。

治療

根本的な治療はない。大動脈解離や大動脈瘤の破裂などの予防が大切である。
この予防が治療の目的である。
内服薬としては、血流量を下げるためにβ遮断薬、
大動脈の拡張を抑えるためにARB(ロサルタン、イルベサルタン)などを服用する

※拡張してしまった大動脈、動脈瘤、弁逆流などは手術を行う

生命予後

大動脈解離や大動脈瘤を予防することで
以前は、40代ぐらいまでだった寿命が、現在は、マルファン症候群のない人と寿命が変わらない。

参考資料
Lindsay ME, Schepers D, Bolar NA, et al : Loss-of-function mutations in TGFB2 cause a syndromic presentation of thoracic aortic aneurysm. Nat Genet 2012 ; 44 :922-927

Matt P, Schoenhoff F, Habashi J, et al : Circulating transforming growth factor-beta in Marfan syndrome. Circulation 2009 ; 120 : 526-532

Habashi JP, Judge DP, Holm TM, et al : Losartan, an AT1 antagonist, prevents aortic aneurysm in a mouse model of Marfan syndrome. Science 2006 ; 312 : 117-121

Brooke BS, Habashi JP, Judge DP, et al : Angiotensin ⅡBlockade and Aortic-Root Dilatation in Marfan’s Syndrome. N Engl J Med 2008 ; 358 : 2787-2795