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抗腫瘍薬

チロシンキナーゼ阻害薬と心毒性 について

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チロシンキナーゼ阻害薬と心毒性 について簡単に整理する。

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チロシンキナーゼ阻害薬と心毒性

チロシンキナーゼ阻害薬

チロシンキナーゼ阻害薬については、別の記事でも載せているが少しおさらい。
作用機序による分類としては、
「シグナル伝達阻害」
「血管新生阻害」
「細胞周期調節阻害」
などがある。
がんに発現の多いシグナル伝達系に作用することで抗腫瘍効果を発揮することが出来る。

チロシンキナーゼ阻害薬と心毒性

チロシンキナーゼ阻害薬に心毒性があることが報告されている。
具体的には、高血圧、心筋梗塞、心不全、左心機能低下などがあるとのこと。
報告によると、一般的に用量依存性がない。
少ない量でも起こる
また、可逆性のものと不可逆壊死のものがあるようで注意が必要である。
不可逆性の場合、薬剤中止ではダメなケースもあるのだろうか。
今後の追加の報告があればまとめたいと思う

心毒性の作用機序

分かっている分を載せておく。下記のような障害により「心不全」を引き起こす。

・ミトコンドリア障害
→エネルギー不足→左心機能低下

・AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)障害
→エネルギー不足+心筋ストレスへの適応不全
→左心機能低下

・血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)障害
→高血圧、心筋ストレスへの適応不全
→左心機能低下

・血小板由来成長因子(PDGFR)障害
→心筋ストレスへの適応障害
→ 左心機能低下

医薬品の例

【オシメルチニブメシル(タグリッソ)】

2019年12月03日薬生安発1203第2号が出されており
「うっ血性心不全、左室駆出率低下」が副作用に追加されている。
決して頻度は高くないが、リスクとしてあることは知っておく必要がある。
RMPに記載されている報告数は下記に引用する


※医薬品リスク管理計画書(RMP)によると
「国内製造販売後(2019年9月25日時点)において、心不全関連症例が 34 例報告された。なお、本剤との因果関係が否定できないうっ血性心不全は5例報告され、当該症例において左室駆出率低下が認められた。臨床試験の安全性併合解析の結果、うっ血性心不全として報告された副作用はなく、駆出率減少として報告された副作用は全体集団で17/1142例(1.5%)、日本人で9/230例(3.9%)であった。そのうちグレード3は 4/1142例(0.4%)、日本人で 2/230例(0.9%)であり、グレード4又はグレード5の報告はなかった。なお、本剤の他の臨床試験において、因果関係の否定されない重篤な心臓障害として、うっ血性心不全1例(D5160C00013 試験)が報告されている。」

服薬指導で確認できること

自覚症状や兆候を聞き取りすると良い。症状の例を下記に示す。
風邪に似たような症状は注意が必要である。

・「動くと息苦しい」
・「夜中息苦しい」
・「普段より疲れやすい・食欲が落ちている」
・「足がむくむ」
・「急に体重が増えた(1週間に数キロ)」
・「咳とピンク色の痰」
・「常に息苦しい」
・「動悸する」

参考資料
2019年12月03日薬生安発1203第2号
タグリッソ錠40mg、タグリッソ錠80mgに係る医薬品リスク管理計画書 アストラゼネカ
北海道大学循環病態内科学教室心不全・心筋症研究グループホームページ(2020年12月12日)