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抗腫瘍薬

ベレキシブル錠(チラブルチニブ)のざっくりとした特徴

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ベレキシブル錠(チラブルチニブ)の特徴について簡単に解説する。
今回は、特に脳腫瘍の方にフォーカスした部分が多い。かなり情報を省いてまとめてみた。
個人的には非常に苦手な分野・・・

ベレキシブル錠(チラブルチニブ)の特徴

「中枢神経系原発リンパ腫」への適応があるのは現状ベレキシブルのみである(2023年)

効能・効果

〇再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫
〇原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫

※「中枢神経系原発リンパ腫」は、原発性の脳腫瘍の中の悪性リンパ腫の1つ。
他には、神経膠腫(しんけいこうしゅ):グリオーマがある。
悪性リンパ腫とは「血液中リンパ球ががん化した病気」である。
そのため、脳腫瘍の悪性リンパ腫であっても脳神経外科で診るか、血液内科で診るかは県によって違ったりする。

「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の「再発」や「難治性」に関して

最初に中枢神経系原発リンパ腫が見つかった場合、入院して点滴での治療となる。
一般的に2023年現在では、まずR-MPV療法が行われる。
その後、放射線治療をする。

R-MPV療法が効果が不十分(難治性)だったり、脳腫瘍が一度なくなったが再発した場合
ベレキシブルを服用することがある。

※R-MPV療法を簡単に説明すると
メトトレキサートを基本として、更に3つの抗腫瘍薬、、リツキサン、procarbazine(プロカルバジン)、ビンクリスチン(オンコビン)を用いる療法である。

※他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない
→単剤使用

用法・用量

「通常、成人にはチラブルチニブとして1日1回 480mgを空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。」

1錠が80mgなので1回に6錠飲むことになる。

※副作用が出た場合は、減量して使うことがある。量の考え方は偶数の錠数で減量していく。
通常量6錠→1段階減量(4錠)→2段階減量(2錠)となる。

ベレキシブル錠が空腹時服用の理由

用法及び用量に関する注意の記載を見ると分かりやすい
「食後に本剤を投与した場合、Cmax 及び AUC が上昇するとの報告がある。食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること」

血中濃度が上がってしまうので空腹時投与となる。
そのため、「朝食前」や「就寝前」の処方が多い。

作用機序・薬理作用

ベレキシブル(チラブルチニブ)が、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)と結合

BTKのキナーゼを阻害
BTKのSRC相同ドメイン3内のY223における自己リン酸化を阻害

腫瘍細胞において恒常的に活性化されているB細胞受容体(BCR)シグナル伝達を阻害

腫瘍の増殖を抑制

※結果だけ見ると、B細胞の活性化と増殖を抑制する薬剤である

服薬指導時の効果の説明(案)

上記のような薬理作用を患者本人に説明しても理解が難しいことが多そうなので案を出しておく。

脳腫瘍の状態や飲み始めるタイミングによるが以下のような説明はどうだろうか
「腫瘍を小さくするための薬です。腫瘍が小さくなると脳腫瘍の症状が軽くなります」
「再発した今ある小さな脳腫瘍がこれ以上大きくならないようにするための薬です」

患者さんの脳腫瘍の状況でかなり説明が変わるかと思われる。
医療機関同士連携して状況を把握できればありがたい。

注意すべき副作用/チェックポイント

インタビューフォームより引用
「重大な副作用として、出血、感染症、重度の皮膚障害、骨髄抑制、過敏症、間質性肺疾患、肝機能障害が報告されている。
主な副作用(発現率 5%以上)は、悪心、口内炎、便秘、高カリウム血症、発疹、斑状丘疹状皮疹であった」

【補足】
○血小板凝集抑制作用があるため出血に注意すること
○日和見感染症を含む感染症の発現、悪化、また、B型肝炎ウイルス、帯状疱疹の再活性化が起こることがある
※そのため、ベレキシブルを服用する前に肝炎ウイルスなどの感染有無のチェックがある
※肺炎(ニューモシスチス肺炎を含む)(4.5%)、アスペルギルス感染症(2.3%)等の感染症があらわれる。

○骨髄抑制作用があるため、貧血、好中球減少症、血小板減少のフォローは必要
○肝機能の検査値が上昇することがある
○高頻度で皮膚症状の副作用が起こる。発疹(36.4%)
※「体に赤い発疹」、「水ぶくれ」「発熱」「ただれ」などが出来ていなかフォロー必要

併用薬として出される可能性のある薬剤例

【フェキソフェナジン(抗アレルギー剤)】

皮膚症状の副作用が多いため、症状を和らげるため一緒に出されることがある

※皮膚症状の副作用が出た場合は、ステロイド+保湿剤(ヘパリン類似物質クリーム)を使う

【ST合剤】

処方する施設の判断によるが、ST合剤を感染症(ニューモシスチス肺炎)を予防するために一緒に出されることがある。
ただし、ST合剤自体にも皮膚症状の副作用が起こることがあるので難しい判断となる。

【アシクロビル(帯状疱疹の既往歴がある人のみ)】

帯状疱疹の再活性が起こらないように一緒に出されることがある

その他の注意

○半錠不可、出来ない
○一包化不可、出来ない→吸湿性があるため
○粉砕不可、出来ない
○簡易懸濁不可、出来ない
※PTPシートのみ