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痛み・鎮痛剤

ヒドロモルフォン の特徴について

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ヒドロモルフォン の特徴について簡単にまとめる。まだまだオキシコドンと比較すると使用頻度は少ないかもしれない。内服薬の商品名としては、定期で服用する徐放錠のナルサス®、レスキューで服用するナルラピド®が発売されている。他には注射剤としてナルベイン注もある。
今回は、内服薬の2つを中心に紹介する。

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ヒドロモルフォン の特徴

・腎機能低下者にも使いやすい
・ナルサス®は1日1回の服用で良い
・ナルサスは徐放性で丸型/ナルラピドは即放性で六角形

効能・効果

「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」

※ガイドライン上の位置付け
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版
「がん疼痛(中等度から高度)のある患者に対して、ヒドロモルフォンの投与を推奨する。1B(強い推奨、中程度の根拠に基づく)」

用法・用量

【ナルサス®】
「通常、成人にはヒドロモルフォンとして4~24mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。」

※ナルサスの「サス」は、sustainなので「持続する」という意味。

【ナルラピド®】
「通常、成人にはヒドロモルフォンとして1日4~24mgを4~6回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。」

※分割経口投与とあるが、基本的にはレスキューとして使われる。
※処方例として、ナルサスを定期で服用、ナルラピドをレスキューで服用となる。
※ナルラピドの「ラピド」はrapidなので「速い」という意味。
※レスキュー量は1日量の薬の6分の1を基本として8分の1から4分の1の幅で使う。
※レスキュー薬として使う場合は、1時間以上空けて服用すること(1時間間隔で追加することが出来る)。

剤形と規格

飲み間違いが起こるリスクを心配してしまうが・・・まずはカタチを知っておくと良い。
是非カタチに注目してほしい。

【ナルサス®】
・徐放錠
・丸型
・2㎎、6㎎、12㎎、24㎎

【ナルラピド®】
・即放錠
・六角形
・1㎎、2㎎、4㎎
・味がない
※オプソ内服液やオキノーム散は苦味を感じる人が割といるため試す

作用機序・薬理作用

μオピオイド受容体に作用して鎮痛効果を発揮する
強オピオイドに分類される。

使用するメリット

・定期の服用は、1日1回でOK。飲む回数が少ない
※1日数回の服用だと飲み忘れてしまう人。例えば、朝は飲み忘れないが、夕は飲み忘れがちな人等に向いている。

・CYPによる代謝がないのでCYPによる薬物間相互作用の可能性が低い
※肝臓においてグルクロン酸抱合を受けてヒドロモルフォン-3-グルクロニドとなるが、これ自体に活性はない。
※フェンタニルやオキシコドンは、CYPにより代謝されるため薬物間相互作用が多い

・代謝物に活性がないため蓄積による副作用(眠気、意識障害、昏睡など)が生じにくい

・腎機能障害時にも使いやすい。用法用量の設定をする必要がない。
※モルヒネは、腎機能障害あるとき使いにくい
※腎機能障害時の排泄は遅延するため副作用には注意が必要。用量調節は慎重に行う事。

・モルヒネ徐放錠やオキシコドンよりも・・・より少ない量で開始することが出来る。経口モルヒネで定時に服用する徐放性製剤(MSコンチン)は20mg/日が最小用量。経口オキシコドンは、モルヒネ換算量で15mg/日が最小量用量。ヒドロモルフォンは、モルヒネ換算量で10mg/日が最小用量となる。

力価換算量を覚えよう!

ヒドロモルフォン、モルヒネ、オキシコドンの力価換算量を覚えておくとよい。
とりあえず、内服ヒドロモルフォンの力価(鎮痛効力)はモルヒネの5倍ということを知っておくと良い。

【内服の場合】
モルヒネ:オキシコドン:ヒドロモルフォン=5:3.3:1
モルヒネ:オキシコドン:ヒドロモルフォン=15:10:3=60:40:12

※ヒドロモルフォン注射薬の力価はモルヒネの25倍である

デメリット

・注射剤はあるが、定期薬もレスキュー薬も錠剤であるため、剤形による使い分けがしにくい。選択肢が少ない。
・形は違うが、名前が似ている事などの理由で飲み間違える可能性がある。
・ナルサス錠は、徐放性があるため噛んだり、つぶしたりして飲むことが出来ない。
※先ほども述べたが、ヒドロモルフォンの内服薬は錠剤タイプしかない。オキノーム散やオプソ内用液などの利便性はない。嚥下困難な人には不向きな医薬品と言える。

おまけ

・ヒドロモルフォンは、モルヒネと化学構造が似ていることから癌による呼吸困難や咳嗽による苦痛にも効果が期待できる可能性がある。
・徐放錠、即放錠、注射剤の3つがそろっていることから、オピオイドの量を決めるタイトレーションを行いやすい

参考資料
ナルサス、ナルラピド、添付文書、インタビューフォーム
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版