アスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬を併用する方法
dual antiplatelet therapy(DAPT)
薬局でも抗血小板薬を2剤出すことがあると思う。
割と併用理由が絞られるので
ちゃんと聞き取りをして「薬歴」に記載しておくことが大切だろう
また、併用期間などは最新の見解にアンテナを張る必要がある
ポイント:まずは、「心臓」か「脳」なのか考える必要があるということ
①「心臓」の場合
血栓予防のため 経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う
ステント留置後、再び狭窄や閉塞して虚血性心疾患を引き起こさないように
DAPTを行う
DAPTの施行期間は、色々議論されるが今回は、ESC/EACTSのガイドラインをもとに紹介する。
※ただし、消化管出血や脳出血のリスクを考慮する必要が有り
血圧コントロール、PPIの内服が必要な場合もある
※PPIを併用しない場合、
空腹時に胃腸に違和感がないか等消化器症状を確認すべきである。
また、PPIを併用する場合、
「胃の調子がいいので」という理由で勝手にPPIの服用を止めないように
「消化管の出血を防ぐ意味」を伝える必要がある。
※今回は詳しく触れないが、経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)の場合
原則DAPT療法は6ヶ月であるが、早くから単剤となる例はある。
高齢者など出血リスクがある人は特に注意
安定冠動脈疾患(安定狭心症)のPCI
出血リスクの低い安定冠動脈疾患患者に対しては、
アスピリンとクロピドグレルを「少なくとも6ヶ月間」併用する。
出血リスクの高い安定冠動脈疾患患者に対しては、
アスピリンとクロピドグレルを「1~3ヶ月間」併用することが推奨されている。
補足:安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018 年改訂版)により引用
「日本におけるNIPPON試験やSTOPDAPT試験においてもDAPT期間の短縮は、
ステント血栓症や心血管イベントのリスク上昇に関与していないこと」
「 1年以上の DAPTの心イベント抑制効果は,糖尿病や心筋梗塞の合併,高度冠動 脈複雑病変で層別化しても認められず 、本邦の観察 研究ではむしろ輸血を必要とする中等度以上の出血リスク が上昇することが報告されている」
※よって、病態や患者の状態によって単剤に移行することが大切
急性冠症候群(ACS)のPCI
出血リスクの低いACS患者の対しては、
アスピリンとクロピドグレルorプラスグレルorチガグレロルを
少なくとも「12ヶ月間」併用することを推奨している。
出血リスクの高いACS患者の対しては、
上記薬剤を「6ヶ月間」併用を推奨している。
補足:急性冠症候群(ACS)とは?
急性冠症候群診療ガイドライン (2018 年改訂版)より
「冠動脈プラークの破綻により急速に冠動脈の閉塞や高度狭窄が起こることで
心筋虚血が引き起こされる病態の総称」
急性心筋梗塞(AMI)、不安定狭心症(UA)、心臓突然死を含む
②「脳」の場合
脳梗塞の場合に用いる薬剤は、
・心原性脳梗塞(心房細動など)→抗凝固薬
・非心原性脳梗塞(ラクナ梗塞・アテローム血栓など)→抗血小板薬
脳梗塞では、急性期(3週間程度)に、
血栓ができるのを強力に抑えるためDAPTをすることがある。
ただし、脳出血のリスクが上がるので通常3週間から3ヶ月で単剤にする。
もしも、漫然と長期に使われている場合は疑義照会するべきである。
補足:脳梗塞急性期の期間の最近の報告
「2015年に報告されたDAPT(アスピリン+クロピドグレル)と単剤(アスピリン)との比較をした試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシスでも3ヶ月以内の短期間
の併用が脳出血や大出血を増加させることなく再発予防に有効であった。」
とのこと
参考文献・資料
Valgimigli M, Bueno H, Byrne RA, et al. 2017 ESC focused update on dual antiplatelet therapy in coronary artery disease developed in collaboration with EACTS: The Task Force for dual antiplatelet ther- apy in coronary artery disease of the European Society of Cardiology (ESC) and of the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS). Eur Heart J 2018; 39: 213-260.
安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018 年改訂版)
急性冠症候群診療ガイドライン (2018 年改訂版)
脳卒中治療ガイドライン2015(2017追補)
循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)