ステアリン酸マグネシウム と吸入剤について、今回はマニアックな内容に触れる。
吸入剤の添加剤として含まれるステアリン酸マグネシウムの意味について説明する
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ステアリン酸マグネシウム と吸入剤
吸入剤の中にステアリン酸マグネシウムが配合されたものが存在する。
その共通点は、抗コリン作用のある薬剤を含む吸入剤に添加されているということである。
例えば、下記の吸入剤にステアリン酸マグネシウムが添加剤として使われている。
・エナジア→グリコピロニウム
・ウルティブロ→グリコピロニウム
・シーブリ→グリコピロニウム
・アノーロエリプタ→ウメクリジニウム
・エンクラッセエリプタ→ウメクリジニウム
・テリルジー→ウメクリジニウム
※いずれも長時間作用性抗コリン薬(LAMA : long acting muscarinic antagonist)
【添加されている理由】
上にあげた抗コリン作用のある成分は、吸湿性が高いという特徴がある。その吸湿性を解決するためにステアリン酸マグネシウムが添加されている。
吸入剤の中身は「散」の状態で存在しており、ステアリン酸マグネシウムのおかげで、「薬剤の流動性」を良くしたり、「カプセルやデバイスへの付着」を防ぐことができる。
ステアリン酸マグネシウム の意外な影響
吸入剤においては、抗コリン剤のために添加されているが、吸入ステロイドの成分にも影響を及ぼしている例がある。その一例は、アテキュアとエナジアである。
共通するステロイドの成分は、モメタゾンフランカルボン酸エステルである。
この2つの吸入剤において医療現場で混乱を招いている?ことがある。
それは、中用量と高用量の規格でモメタゾンフランカルボン酸エステルの量が違うことである。
・アテキュラの中用量(MF160μg)とエナジアの中用量(MF80μg)
・アテキュラの高用量(MF320μg)とエナジアの高用量(MF160μg)
上記のように2倍異なっている。
ただし、ポイントは、量は違うけれどアテキュラの中用量とエナジアの中用量は、ステロイドとしての効果は同じ程度あるということ。
高用量も同じである。
その原因がステアリン酸マグネシウムなのである。エナジアの方にステアリン酸マグネシウムが添加されていることで、ステロイド成分の吸収も良くなっているために、量が少なくて済んでいるのである。
メーカーとしては、モメタゾンフランカルボン酸の量は見ずに
中用量同士、高用量同士がステロイドとして効果は同等と考えてほしいとのこと
補足: ステアリン酸マグネシウム とは?
ステアリン酸マグネシウムは、脂肪酸とマグネシウムから成る金属石ケンの一種である。平成16年に添加物として指定されている物質でカプセル剤や錠剤の滑沢剤、潤滑剤、付着防止剤として使用されている。安全性においても問題ないとされている。
厚生労働省の「ステアリン酸マグネシウムの使用基準改正のための概要書」によると
「ステアリン酸マグネシウムは、打錠の際の臼や杵への付着を防止し、かつ錠剤の表面を滑沢にする。また、顆粒の流動性を良くする性質があるので、打錠の際のフィダーから、臼への顆粒の供給が円滑となり、均一で重量偏差の少ない錠剤を作ることができる。」
と記載されている。
参考資料
ステアリン酸マグネシウムの使用基準改正のための概要書 厚生労働省
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