メスチノン (ピリドスチグミン)の特徴について簡単に整理する。実際に薬局で調剤する機会は少ないかもしれない。
参考資料・関連記事
コリン作動性クリーゼ とウブレチドについて
メスチノン (ピリドスチグミン)の特徴について
服薬指導の際などは、副作用の初期症状などのフォローが大切
効能・効果
「重症筋無力症」
※骨格筋や脳神経支配下の小骨格筋に効果的である
例えば、球麻痺症状(嚥下障害、構音障害)、眼筋障害(眼瞼下垂、複視、眼球運動障害)に効果がある。
※球麻痺:延髄にある脳神経障害によって起こる症状。球とは延髄を指し、延髄の麻痺のことである
※構音障害(こうおんしょうがい):呂律が回らないこと
※対症療法であり、免疫療法などと組み合わせる
用法・用量
「通常成人1日3錠を1日3回に分けて経口投与する。ただし、医師の監督下に症状に応じて、適宜、用量および服用回数を増減することができる。」
薬理作用・作用機序
神経筋接合部のコリンエステラーゼ活性を可逆的に阻害する
↓
アセチルコリンの分解を抑制する
↓
アセチルコリンの濃度が上昇する
↓
間接的にアセチルコリンの作用を強める
↓
筋肉の収縮を助ける
※メスチノン(ピリドスチグミン)自体にもアセチルコリン様作用がある
※作用の強さは、ワゴスチグミン(ネオスチグミン)より弱く、作用発現は緩徐でより持続的
※作用持続時間3~6時間程度
※発現時間30分から40分
注意する副作用
【主な副作用】
「下痢」、「腹痛」、「発汗」、「骨格筋の線維性攣縮」、「流涎」等がある。
「下痢」や「腹痛」は、14%程度に起こる
※線維性攣縮:運動神経などが障害されて筋肉が細かく痙攣すること。ピクピクなる
※流涎(りゅうぜん):よだれを流すこと
【重要な副作用】
「コリン作動性クリーゼ」
※ 「呼吸困難」を伴う「アセチルコリン」過剰状態の急激な悪化とされ、人工呼吸を要する状態
※初期症状などは、関連記事を参照のこと。コリン作動性クリーゼ
重要な基本的注意
「ムスカリン様作用軽減のために、アトロピン硫酸塩水和物を投与することは、コリン作動性作用を過小評価し、メスチノンの過剰投与を招くおそれがあるので、常用すべきではない。」
※薬剤師としてどうフォローしてよいか悩ましいことだが、メスチノンと一緒に「ロートエキス」などが処方されるケースがある。
ロートエキスは、上記の副作用を防ぐ目的で出されているが、アトロピンの成分を含むため「常用すべきでない」と書かれている。
メスチノンの量が増えてきたり、副作用と思われる症状が少しでも見られるときは、必要に応じて処方医に情報提供してはどうだろうか。
製剤的な特徴
・粉砕可能、つぶし可能
・一包化可能
・簡易懸濁可能
→破壊後、水(約 55℃)、5 分、8 Fr.チューブを通過可能
※重症筋無力症の方が服用する薬なので粉砕したり、簡易懸濁するケースはよくある。
参考資料
メスチノン錠 60mg の安定性に関する資料 共和薬品工業
メスチノン、添付文書、インタビューフォーム