トラニラスト と膀胱炎の話について簡単に触れる。
トラニラストの有名な商品名は、リザベンである。
副作用として、膀胱炎のような症状が生じる薬剤はいくつか存在する。今回はトラニラストに注目してみる。
トラニラスト と膀胱炎の話
頻度は高くないが、膀胱炎症状を説明しておくこと。また、検査値としては好酸球の上昇に注視する。
トラニラストによる膀胱炎の症状の特徴
トラニラストによる膀胱炎の症状は「 頻尿」、「排尿時痛」、「尿混濁」などが強烈という特徴がある。また、肉眼で分かるくらいの血尿となることも多い。分かりやすく整理すると、
・オシッコが赤くなる(血尿)
・オシッコの回数が増える
・オシッコのときに痛い
・オシッコが残っている感じがする
などの症状を急に感じたり、続いたりするときは注意が必要である
発生機序
詳しい機序は、おそらく明確には分かっていない。
薬が原因の膀胱炎の「原因薬剤」や「その代謝物」は腎から尿中に排泄されるので・・・
オシッコの中に濃縮された「原因薬剤」と「代謝物」と膀胱上皮が直接的に長い時間接触することにより、膀胱は、毒性を受けやすいと言われている。また、膀胱組織に好酸球が浸潤すると何らかの免疫系が関与して「膀胱炎」を引き起こすと考えられている。
添付文書上の記載
リザベンの添付文書の「重要な基本的注意」に下記のような記載がある。
「本剤による膀胱炎様症状,肝機能障害が出現する場合には,末梢血中好酸球増多を伴うことが多いので,本剤投与中は定期的に血液検査(特に白血球数・末梢血液像の検査)を行うことが望ましい。好酸球数が増加した場合には,十分な経過観察を行うこと。」
また、「重大な副作用」の箇所に下記のような記載がある。
「膀胱炎様症状:頻尿,排尿痛,血尿,残尿感等の膀胱炎様症状があらわれることがある。観察を十分に行い,このような症状があらわれた場合には,直ちに投与を中止すること。」
※膀胱炎のような症状が出たら直ちに中止する必要があるので注意すること
インタビューフォームに記載された頻度
インタビューフォームの「副作用」の項目である「項目別副作用発現頻度及び臨床検査値異常一覧」では、膀胱炎が生じている頻度は、0.06%程度ある。頻度は高くはない。
膀胱炎症状が起こった場合の対策
通常の膀胱炎であれば、抗菌薬や止血剤などが処方されるが・・・トラニラストが原因の場合効果がない。
ただし、トラニラスト自体を中止すれば、速やかに膀胱炎の症状が消えるのが特徴である。ちなみに膀胱炎が発症するまでの期間は、報告によると数週間から4年と様々なので注意すること。好発期間は、服用を開始して1か月から3か月の間である。
服薬指導上のポイント
患者には、下記のことを十分説明おくべきと「重篤副作用疾患別対応マニュアル」に記載されている
:出血性膀胱炎発症のリスクがあることおよびその初期症状
・一日の尿量を増やすこと→摂取する水分量を増やす
・オシッコを我慢せずに、トイレに頻回に行く。
→トラニラストなどによる薬剤性の膀胱炎では、膀胱にオシッコを溜めないことが大切なので頻回のトイレが予防策として効果的である。
参考資料
リザベン、添付文書、インタビューフォーム
林真二, 岩井謙仁, 田中勲:ト ラニラストによる好酸球性膀胱炎の2例, 西日泌, 57:1027-1030,1995
重篤副作用疾患別対応マニュアル、出血性膀胱炎、平成23年3月(令和3年4月改定)厚生労働省