~フェログラデュメット®・フェロミア®・インクレミン®などの共通点・違いについて解説
①共通点
・適応症:鉄欠乏性貧血
・禁忌:鉄欠乏状態にない人
→薬局でも「検査値」や「医師に鉄が欠乏していると言われた」か確認するべき
・副作用 :「悪心」「嘔吐」
1~2割の患者に見られる 高齢者や男性には少ない。
女性に多い。
この副作用は、薬剤中の鉄の含有量に比例する(用量依存的)
※空腹時の方が吸収されやすい。
しかし、悪心(ムカムカした感じ)の副作用が出やすくなってしまう
・便が黒くなることがある。
→小児に出す場合、親にも伝えておかないと意外と驚かれる。
心配いらないことを伝える必要はあるだろう。
※高齢者からも時々「便が黒くなったけど大丈夫?」と聞かれたり、それが原因で自己中止してしまうので伝えた方がよい。
・歯が茶色?茶褐色に着色する場合がある
添付文書での対応は「重曹などで歯を磨くこと」
→家族や施設のスタッフには伝えておくと良さそう
②違い
徐放性鉄剤: フマル酸第一鉄(フェルムカプセル®)、 硫酸鉄(フェロ・グラデュメット®)
・溶け出し方:胃から腸にかけて吸収される。
・胃の中で急速に鉄が放出されることがないため、
胃の粘膜への影響は少ない。
「空腹時」にも服用可能
・胃酸が必要のため、胃がん等で「胃を切除している人」には使えない。
(胃酸によりFe2+になる)
・制酸剤(胃酸が減ってしまうため)との併用に注意
※【フマル酸第一鉄(フェルム®カプセル)】の特徴
鉄剤の中で最も単位重量当たりの鉄含量が高いため
少量の服用量で十分な効果が期待できるらしい
非徐放性鉄剤:クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア®)、 溶性ピロリン酸第二鉄(インクレミン®シロップ)
【クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア®)】
胃酸によるFe2+への変化が必要ない非イオン型の鉄剤。
「食後」でも吸収に影響しない (広いpHで溶解する)
「中性」から「塩基性」でも腸管吸収が可能な可溶性低分子鉄
※向いている人(低酸状態でもOK)
・制酸剤を服用している人
・胃酸が少ない人
・胃を切除した人
・高齢者にも使いやすい
・嚥下困難な方には顆粒剤がある
※胃を刺激するFeイオンを遊離しにくい
【溶性ピロリン酸第二鉄(インクレミン®シロップ)】
・さくらんぼの匂い
・Fe3+製剤なので必ず「胃酸」が必要
・胃を切除した人はNG
・消化器の副作用は最も少ない
(私の勤める薬局の近所の医師は高齢者・嚥下困難者に処方される)
※ただし、添付文書上の適応は15歳までしかないので疑義照会は必要だろう
おまけ:クエン酸第一鉄の簡易懸濁法の様子
参考資料
日本内科学会雑誌 第99巻 第6号
フェルム®カプセル、インクレミン®シロップ、フェロミア®錠・顆粒、フェログラデュメット®
各添付文書・インタビューフォーム