ポイント
BNPが心機能、NT-proBNPが心機能に腎機能を含めたようなイメージをもつこと
明確な目標値はないが、心不全の場合BNP200以下を目標とされていることがある。
薬局で見るときは、個人差の大きい数値のため
前回の数値や過去の数値と比較してどうかを評価し、悪化してないかの判断などが
出来ればよいと思う。
イメージしにくい数値のため、薬局にて患者から質問されることもある数値なので
ざっくりとしたイメージを持っておくとスムーズに対応できるのではないだろうか。
補足(心不全でない場合もある)
①ナトリウム利尿ペプチドについて
Na排泄を伴う利尿と血管平滑筋弛緩作用を有するペプチドである。
ANP、BNP、CNPなどがあり、臨床でよく見るのはBNPである。
ANP:心房性ナトリウム利尿ペプチド(心房で生合成される)
BNP:脳性ナトリウム利尿ペプチド
CNP:C型ナトリウム利尿ペプチド
※非心血管患者の心臓におけるANPとBNPの分布は、
ANP→心房97%、心室3%
BNP→心房23%、心室77%
※色々あるが、今回はBNPの方だけに注目する
②BNPとNT-proBNPについて
BNP:脳性ナトリウム利尿ペプチド
NT-proBNP:脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント
BNP前駆体が産生され、血中に出るときに2つに別れる。
BNPは、生理活性(生物学的活性) があり、
NT-proBNPには、生理活性(生物学的活性)がない。
心疾患などで心室や心房筋が伸展されるとBNPとNT-proBNP
が分泌される。
心室筋、心房筋のどちらかも分泌される
これらの検査値の数値は、ガイドライン上基準値が設けれていない。
個人差が大きいこともあるので、あくまで目安である。
画像所見や他の臨床状態とを組み合わせて用いられる。
この数値で確定診断はありえない。
過去の数値と比較してどうかを見ることも多い。
この数値以上が心不全とか決められていない。
BNPは心臓の機能をメインに
NT-proBNPは心機能と腎機能の状態を含めた数値と覚えるとイメージしやすい
BNP
ブタやイヌの脳から単利同定されたが、ヒトでは脳にほとんど分布していない。
「心室」で生合成、分泌される。
BNPは、心室筋細胞内で産生され、心室の容量負荷をきたす場合BNPが増加する。
また、10%ほど心房でも分泌されるので「心房細動」でも軽度上昇する。
半減期:約20分
→この短さがポイントで、ある程度その時の心臓の状態を反映している
慢性心不全患者の場合
200以下を目標に、出来れば180以下
もし100以下に出来たらさらに良い
下がっていくことで心機能は良くなっていくとのこと
(本音は2桁にしたいらしい)
BNPが高いということはwall テンション(左心室)が上がっているということ。
通常は、腎臓が悪くなって上がるものではない。
NT-proBNPについて
半減期NT-proBNPが約120分です。
→BNPより半減期が長いことがポイント
代謝のほとんどが腎臓からの排泄に依存しているため
腎機能により影響を受けやすい。
eGFR30ml/min/1.73m2未満では増加の程度が大きるとのこと
※BNPより心不全の時、上昇する比率が大きいと言われている
※何度も記載するが、
基本的に、BNPやNT-proBNP値をある数値以下に
維持しなければいけないという目標値はない。
補足(心不全でない場合もある)
※急性期の心不全を除外するためのカットオフ値
BNP100未満、NT-proBNP300未満(欧州心臓病学会)
※腎不全がなければ2つの数値は相関するので
NT-proBNP=BNP×6
という換算式も存在する
※NT-proBNPの一過性の上昇は、発作性心房細動の発見に役立つ
※心房粗動ではNT-proBNPあまり上昇しない
(心房細動より心房筋が拡張しないため)
※心室期外収縮ではあまりNT-proBNPは上昇しない
参考資料
Hosoda K, at al. Hypertension 1991; 17(6 pt 2): 1152-1155
異常値の出るメカニズム第4版 河合 忠 他
心不全研修会資料
慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)