セビメリン(エボザック)は、もともとアルツハイマー型認知症に対する薬として研究されていたが、唾液分泌の促進作用が発見されたため、口腔乾燥の薬として承認されている。アセチルコリン受容体の作動薬のこともあり、禁忌が多いので注意が必要である
①特徴や注意点
効能・効果
「シェーグレン症候群患者の口腔乾燥症状の改善」
※かなり適応症は限られる。シェーグレン症候群のみである
どれぐらいの人に効くの?(改善率)
半数位の人には効果があるらしいが、効果がない場合、長期投与できないので注意(重要な基本的注意参照)。
「シェーグレン症候群患者を対象とした、二重盲検法群間比較試験を含む臨床試験(総対象例数 813 例)において、本剤の改善率(中等度改善以上)は52.0%(290 例/558 例)」
途中で投与が中止となったケース
「消化器障害」により、途中で服用をやめた人がいるので注意が必要である。
長期試験の内容が参考となる。
投与中止した者のうち
「半分程度」が、「投与開始から1か月以内」で中止していることが分かる。
「長期投与試験において、中止例は安全性採用例 462 例中 147 例(31.8%)あり、そのうち副作用による中止例は 93 例(20.1%)であった。また、副作用により中止した 93 例中 47 例(50.5%)は投与開始後 4週間以内に中止し、さらに 93 例中 64 例(68.8%)は消化器障害による中止であった」
重要な基本的注意
「(1) 本剤投与により効果が認められない場合には、漫然と長期にわたり投与しないように注意すること。
(2) 縮瞳を起こすおそれがあるので、投与中の患者には夜間の自動車の運転及び暗所での危険を伴う機械の操作に注意させること。」
※高齢者で運転する人は多いので(2)は特に注意。
具体的に「夜間」と明記されていることが興味深い。
②作用機序
ポイント:ムスカリン受容体の作動薬として働く
唾液腺に存在するムスカリン受容体M3に作用
↓
細胞内情報伝達系のイノシトールリン脂質代謝回転を濃度依存的に促進
↓
唾液分泌を促進すると考えられる
ムスカリン受容体についてはこちらを参照
③禁忌事項
添付文書の禁忌には下記のことが記載されている。
- 重篤な虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症等)のある患者
- 気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患の患者
- 消化管及び膀胱頸部に閉塞のある患者
- てんかんのある患者
- パーキンソニズム又はパーキンソン病の患者
- 虹彩炎のある患者
アセチルコリン受容体作動薬であるため、
気管支や消化管を「収縮」するため上記病態を悪化させる。
また、血管が正常であれば血管拡張作用があるが、虚血性心疾患を有する場合は、血管を収縮し狭窄を起こすことが分かっているため、
「重篤な虚血性心疾患」には禁忌となっている。
④よくある副作用
よくある副作用は、ほとんど消化器症状である。
「嘔気」「悪心」「腹痛」「下痢」「多汗」「嘔吐」
その他に「めまい」「頻尿」などがある。
参考資料
エボザック®添付文書、インタビューフォーム