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循環器

急性・慢性心不全診療ガイドライン2021年フォーカスアップデート のポイント~各薬剤の位置づけ~

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急性・慢性心不全診療ガイドライン2021年フォーカスアップデート のポイントについて簡単に整理する。
今回のアップデートにより心不全標準治療のアルゴリズムが変更されている。
主なところをピックアップして載せる。心不全アルゴリズムで変更されたこと(抜粋)
抜粋なので全てを含んでいるものではないので注意してください。
今回は急性心不全については割愛。

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急性・慢性心不全診療ガイドライン2021年フォーカスアップデート

心不全治療アルゴリズムに関して2017年版との違い

・2017年度版と違い薬物治療と非薬物治療が明確に分けられた。左室駆出率(LVEF)40%未満の心不全(HFrEF)に対しては適切かつ十分な薬物治療を確認した上で非薬物治療に移行することが記載されている。
非薬物治療とは、「ICD/CRT」「経皮的僧帽弁接合不全修復術」がある。

※ICD:植込型除細動器
※CRT:心臓再同期療法

・「疾病管理」、「運動療法」、「緩和ケア」は薬物療法とともにすべての患者で実施すべきと記載されている。

HFrEF患者に対して

薬剤の位置づけを標準的に用いるべき(基本薬)と追加して使うべき薬剤(併用薬)に大別されている。

【基本薬】

基本薬が「ACE阻害薬/ARB」+「β遮断薬」+「MRA」が基本治療薬であることは従来同様である。
基本治療薬で効果が不十分な場合の次のステップとして、

・「ACE阻害薬/ARB」から「ARNI」への切り替え
・「SGLT2阻害薬」の追加投与が追加されている

(どちらを優先するかは言及されていない)

※MRA:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
※ARNI:アンジオテンシン受容体・​ネプリライシン阻害

【追加薬】

追加薬としては、
・うっ血に対して利尿薬
・洞調律75拍/分以上の場合はイバブラジン(コララン®)
・必要に応じてジギタリス
・血管拡張薬

※つまり、イバブラジンは併用薬として書かれている。基本薬ではないことに注意する

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各薬剤の位置づけ

推奨クラス
Ⅰ:手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがある。または見解が広く一致している
Ⅱa:エビデンス・見解から、有効・有用である可能性が高い

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤ARNI:サクビトリルバルサルタンナトリウム

①「ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、MRAがすでに投与されているHFrEFにおいて、症状を有する(または効果が不十分)場合、ACE阻害薬/ARBからの切り替えを行う」
(推奨クラスⅠ、エビデンスレベルA]

②「ACE阻害薬/ARB未使用の入院中のHFrEFへの投与考慮する」
(推奨クラスⅡa、エビデンスレベルB)

※日本では適応外、欧州心臓病学会ESCのclinical practice updateにおいては考慮してもよいと記載あり

③「利尿薬が投与されているNYHA心機能分類Ⅱ度以上のHFmrEFにおいて、ACE阻害薬/ARBからの切り替えを考慮する」
(推奨クラスⅡa、エビデンスレベルB)

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SGLT2阻害薬:ダパグリフロジンまたは、エンパグリフロジン

「最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬、ACE阻害薬/ARBおよびMRA)が導入されているにも関わらず症候性で、収縮能の低下した(LVEF≦40%)慢性心不全患者に対し、心不全悪化および心血管死のリスク低減を考慮してダパグリフロジン(フォシーガ®)または、エンパグリフロジン(ジャディアンス®)を投与する。」

※エンパグリフロジンの国内での慢性心不全の適応は未承認(2021現在)
(推奨クラスⅠ、エビデンスレベルA)

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HCNチャネル阻害薬:イバブラジン

「最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬、ACE阻害薬/ARBおよびMRA)にも関わらず症候性で、洞調律かつ心拍数≧75拍/分のHFrEF(LVEF≦35%)患者において、心不全入院および心血管死のリスク低減に考慮する」
(推奨クラスⅡa、エビデンスレベルB)

「ACE阻害薬/ARBおよびMRAを投与されているものの、洞調律で安静時心拍数≧75拍/分の症候性HFrEF(LVEF≦35%)患者であるがβ遮断薬に不耐容あるいは禁忌である患者において、心不全入院および心血管死のリスクを低減するために考慮する」
(推奨クラスⅡa、エビデンスレベルC)

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参考資料
急性・慢性心不全診療ガイドライン2021年フォーカスアップデート