" />

感染症・抗菌薬

風邪と抗菌薬 の話

スポンサーリンク

風邪と抗菌薬 の話について簡単に整理する。2016年4月に策定されたAMR対策アクションプランに沿って抗菌薬の適正使用を考えてみる。
AMR対策アクションプランが策定された背景には、世界的に微生物の薬剤耐性率を下げよう!という流れになっているからである。
2013年に、AMRが原因でなくなった人は、世界で低く見積もって70万人と発表されており、このまま何も対策をしないと2050年に、約1000万人に達すると言われている。しかし、風邪の場合・・抗菌薬が必要な場合はどんな時だろうか・・・

AMR: Anti Microbial Resistance (薬剤耐性)

参考資料
ウイルス感染と細菌感染の違い

風邪と抗菌薬 の話

風邪症状がある場合に抗菌薬を考慮するケースを知っておく。
基本的には、風邪で抗菌薬は出さないスタンス。

風邪の原因微生物

ご存じの方も多いと思うが、いわゆる「風邪」の原因微生物は、8割から9割が「ウイルス」である。そのため、基本的に抗菌薬は必要なく、体を休めることが大切である。
「基本的に」というのは、例えば「基礎疾患のない若者」が該当する。それなのに医療機関を受診すると・・・
当たり前のように抗菌薬が出されるケースが多い。
薬剤耐性率が上がると必要な時に抗菌薬が効かないことにつながってしまう・・・
では、どんな時に「抗菌薬」が必要ということになるのか?

抗菌薬が必要なケース

肺炎などの重症化するリスクが高い場合に抗菌薬投与の対象となる。ただし、必ずしも抗菌薬を投与するのが正解ではないので注意。
(個人的には、易感染リスクファクターがあるからと言って「抗菌薬」を出すというのはやめてほしい)

どんな人が重症化しやすいのか?
「易感染リスクファクターを持つ人」や「二次性の細菌感染の疑いがある人」が該当する。

易感染リスクファクターの人

・70歳以上の人
・糖尿病
・肝硬変
・腎不全
・COPD
・喘息
・慢性肺疾患を持つ人
・低栄養状態
・ステロイド・免疫抑制剤を使用している人
・感染症を繰り返す人

二次性の細菌感染の疑いがある人

安静にして回復を図ったが・・・
・症状の改善が見られない時
・症状が悪化してしまった時

※この場合は、若くて基礎疾患がない人も該当する

服薬指導の際の工夫

・抗菌薬が必要な人なのか考えてみる。(疑義照会するかは別として・・・)
・抗菌薬が出ておらず、患者が納得していない場合は説明する。
→ウイルス感染症による「感冒」であること、抗菌薬がなくても1週間から10日程度で回復すること(ピークは1日から2日)等
・抗菌薬が出ていない場合は、1週間程度で回復しない場合や悪化した場合は受診するように説明する。

ウイルス感染と細菌感染の症状や所見の違い

【ウイルス感染】

・白血球数はほぼ正常のことが多い
・CRP上昇
・鼻汁痰色→白いか粘液性

細菌感染】

・白血球数は上昇 (好中球が特に)
・CRP上昇
・鼻汁痰→黄色い、膿っぽい感じ

※上記の「細菌感染」の所見や中耳炎、副鼻腔炎の合併などがあれば抗菌薬を出した方がいいかもしれない。
ただし、抗菌薬を投与するか・・・対症療法にするか・・・非常に判断は難しい

参考資料
厚生労働省、抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 2017
薬剤耐性対策アクションプラン2016-2020