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在宅医療 神経系

ラジカット内用懸濁液 (エダラボン)について

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ラジカット内用懸濁液 について解説します。一般名は、エダラボンです。
もととも、ラジカット注/ラジカット点滴静注バッグが2001年に発売されている。点滴において、2010年に「脳梗塞急性期に伴う神経症候、日常生活動作障害、機能障害の改善」に適応が認められ、2015年には「筋萎縮性側索硬化症患者における機能障害の進行抑制」の適応追加となった。しかし、月に10点滴を行うことが患者の負担であったり、在宅医療にスムーズに移行出来ないケースがあったりした。
医療現場の声により、先に米国で承認されていた懸濁液を日本でも発売することとなった。

ラジカット内用懸濁液 について

酸化ストレスを軽減して、ALSの発症、進行を抑制する薬剤

効能・効果

「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」

※脳梗塞に適応はない

【効能又は効果に関連する注意5.2】
「ALS重症度分類4度以上の患者、努力性肺活量が理論正常値の70%未満に低下している患者におけるエダラボンの投与経験は少なく、有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に本剤を投与することについては、リスクとベネフィットを考慮して慎重に判断すること。」

※ALSの重症度分類は1類から5類まである。
4度というのは、ALSの重症度分類で「呼吸やたんの吐き出しができない、食べ物の飲み下しに支障がある」状態のこと。
5度というのは、「気管を切開している、人工呼吸器を使っている、経管栄養をしている」状態のこと。

※1つの目安として、気管切開していると効果が期待できないとして中止する場合もある。メーカー曰く努力肺活量が理論正常値の70%から80%くらいは効果が期待できるとのこと。

用法・用量

「通常、成人に1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に1日1回経口投与する。
通常、本剤投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、これを繰り返す。
第1クールは14日間連日投与する投与期の後14日間休薬し、第2クール以降は14日間のうち10日間投与する投与期の後14日間休薬する。」

※包装規格として、35ml(7回分)と50ml(10回分)が存在する。第1クールでは、35mlを2本処方し、2クール目からは、50mlを1本処方することになる。

※14日処方でも休薬期間があるため、実質1か月処方となる。

空腹時の理由

ラジカットが自体が非常にデリケートな薬剤であり、食後すぐに服用する吸収がかなり低下する。

参考として
・高脂肪食摂取30分後の服用では、空腹時投与と比較してCmaxが約80%低下し、
AUCが約60%低下。
・高脂肪食摂取4時間後の服用では、空腹時投与と比較して、Cmaxが約50%低下し、
AUCが約25%低下。

用法及び用量に関連する注意
「本剤は食事の影響により血漿中濃度が低下するため、起床時等の8時間絶食後に本剤を服用することとし、服用後少なくとも1時間は水以外の飲食は避けること。8時間絶食ができない場合、低脂肪食では摂取後4時間以上、軽食では摂取後2時間以上あけて、本剤を服用することが可能である。ただし、高脂肪食では摂取後8時間以上あけて本剤を服用すること。」

※臨床試験での高脂肪食は、1000キロカロリー、50%脂肪で検証されている。
※低脂肪食とは、400キロカロリー、25%脂肪、軽食とは、250キロカロリーのことである。

薬理作用・作用機序

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症には、いくつかの原因が考えられている。
そのうちの「酸化ストレス原因説」がある。
ALSは、脳からの上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが損なわれる病態である。
その神経が傷つく原因に「酸化ストレス」が関係している。

酸化ストレスが運動神経を傷害し、ALSが発症・進行するのだ。

【薬理作用】
ラジカット(エダラボン)を服用する

体内の酸化ストレス軽減する

運動神経の障害を防ぐ

ALSの進行を抑制する
※完全に治す治療ではない

どんな人に向いているのか

・生活や機能が自立している場合
・呼吸機能が正常に保たれている場合
・ALSを発症して3年以内の場合
・ALSの状態にもよるが、点滴のための血管ルートが取れない場合
・月に10回病院に受診することが困難な場合

副作用

比較的多い(2%以上の頻度)副作用は、「浮動性めまい」、「頭痛」、「疲労」である。

※腎排泄の薬剤であるため、脱水症にも十分注意が必要
自覚症状としては、「口や喉が渇く」、「汗や尿の量が減る」などに気を付ける。

経鼻胃管または胃瘻チューブから投与する場合の注意点

・胃瘻チューブから投与する場合、専用の経口投与シリンジで液剤をボトルから取り、カテーテルシリンジのバレルに入れる。
投与後は、チューブに残る薬液を30ml以上の水で再度投与する。

・ラジカットはラジカットのみ投与すること。つまり他の薬剤とは混ぜない。

※簡易懸濁法などで他の薬剤を懸濁中に一緒に入れない
※投与の際に、懸濁された他の薬剤と直前に混ぜて入れない
※ラジカットはあくまでも単独投与

保存方法

ボトル開封前は、冷蔵庫で保管、ボトル開封後は、室温で保存してください。
使用後は、必ずキャップをしっかり閉めて、「まっすぐ立てて保管」する必要がある。

※開封後は15日以内に使用すること。超えたものは廃棄。

その他の特徴・注意点

・誤嚥を防ぐために、液体にトロミがつけられている

・味は甘い

・使い方は、説明文書などにメーカーが作成した動画QRコードで載せてあるので参考にすること

・「重篤な腎機能障害のある患者」に禁忌

【参考資料】
ラジカット内用懸濁液2.1%、添付文書、インタビューフォーム
ラジカット内用懸濁液、医薬品リスク管理計画RMP資料
田辺三菱製薬への問い合わせ、説明会資料