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循環器

ジャディアンスと心不全 (エンパグリフロジン)について~今後追記予定~

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ジャディアンスと心不全 について整理する。エンパグリフロジン(ジャディアンス)は、2015年に2型糖尿病治療薬として発売され、2021年に「慢性心不全(左室駆出率が低下した場合)」の適応追加が承認されている。2022年には「左室駆出率が保たれた慢性心不全」への有効性が示されている。

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ジャディアンスと心不全

HFrEFだけでなくHFpEFへの有効性が示された薬剤である。
左室駆出率の低下の有無に関係なく使うことが出来る

効能効果

「〈ジャディアンス錠10mg・25mg〉2型糖尿病
〈ジャディアンス錠10mg〉慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」

※ジャディアンス10mgだけが「慢性心不全」に使えるので注意する。

用法用量

「〈慢性心不全〉
通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。」

※食事に関係なく飲むことが出来る

糖尿病と慢性心不全を合併している場合の量

「2型糖尿病と慢性心不全を合併する患者では、血糖コントロールが不十分な場合には血糖コントロールの改善を目的として本剤25mgに増量することができる。ただし、慢性心不全に対して本剤10mg1日1回を超える用量の有効性は確認されていないため、本剤10mgを上回る有効性を期待して本剤25mgを投与しないこと。」

※目的により量が異なるので注意する。あくまでも25mgを使うのは、血糖コントロールの改善目的の時である。

左室駆出率による影響の差

左室駆出率が低下した心不全患者と左室駆出率が保たれた心不全患者はリスクが同程度という報告がある。
リスクというのは、「心血管死」や「心不全による再入院」のイベント率である。

ちなみに、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)に対して効果が示された試験は、国際共同第Ⅲ相・検証試験(EMPEROR-Preserved試験)である。HFpEFに対してのエビデンスのある薬剤自体が少ないため注目されている。HFrEFにもHFpEFにも効果がある薬剤ということになる。

【注目されている部分】
・心血管死または心不全による入院の初回発現までの期間を延ばす
・心不全による入院の初回発現と再発をイベント数を減らす

※心臓自体を治す訳ではないが、イベントなどを起こしにくくする効果がある。

考えられている作用機序・薬理作用

エンパグリフロジンは腎臓の近位尿細管におけるSGLT2を介して、グルコースだけではなくナトリウム再吸収も抑制する
そのため、ナトリウムの排泄が増加する。
結果として、尿細管糸球体フィードバックが増加し、心臓の前負荷及び後負荷の減少、並びに交感神経活性の低下作用などを発揮していると考えられている。
他にも、心臓へのケトン体供給による代謝への作用、酸化ストレス・炎症の抑制なども関係している可能性がある。

つまり、「心臓の負担が減ることで致命的なイベントを減らすことが出来る」
※実は・・・まだはっきりとした作用機序は分かっていない。

参考資料
Tsuchihashi-Makaya M, et al.: Circ J.2009; 73(10): 1893-1900
ジャディアンス、添付文書、インタビューフォーム